テロワールへの誘い

門柳、田高、福地の田圃の違いとは

2010年、農と醸との垣根を越えるべく、初めて田圃の土に足を踏み入れました。
実際に携わることでしか得られない経験の数々。
それは、田圃一枚一枚の土地の違い、毎年の天候の違いであり、とりわけ太陽の尊さが身に沁みました。
田圃で起きるドラマは年毎に新しく、決して同じ物語を紡ぎません。
そうした私たちが肌で感じてきたテロワールをストレートに表現しました。

黒田庄の3つのエリア
それは私たちの
尊いサンクチュアリ

門柳Monryu

新生代第四紀(約260万年前〜)に形成され、砂礫、砂、シルトの河成堆積物、砂岩、礫岩の崩積性堆積物を母材としています。表層は黒味が強く、モンモリロナイト粘土を多く含み、下層は未風化及び不朽した礫が全体に見られます。
門柳山が隆起した時に形成された丘陵地を造成し水田にしています。東西に開けているため日照は長く、山間地で標高が高いため昼夜の寒暖差が生まれ、米の生育には理想的な気候になります。
体感気温は田高や福地と比べて2~3℃ほど低いのが特徴です。
また田圃へ導かれる水も加古川の水ではなく、山から流れる門柳川の冷たい水がひかれているため、水温は低く保たれ、稲が夏バテすることがありません。
そして、山が削られて出来た砂、石が多い地質で、水や肥料が抜けやすいため、稲自身が力強くなり、それが理想的な気候と合わさり複雑さやエレガンスさを生み出します。

田高Tako

中生代白亜紀(約1億4500万年前〜)に形成され、礫、砂、シルトの河成堆積物を母材としています。モンモリロナイト粘土を含む褐色の表層の下には耕作によって出来た硬い耕盤層があり、下層は水はけが良く全体的に褐色を呈しています。
田高地区は標高が低く肥沃な土地で、その土地は広く平らで太陽の光を遮るものがありません。また北西に山があり西日を遮るため米の生育にとって重要な昼夜の寒暖差が生まれます。
その昔、文字通り田圃の価値が高い地区だったため、この名前になったと言われています。
加古川が氾濫して形成された土壌で粘土質と砂が適度なバランスを保っており、米に栄養が凝縮するため、生み出される日本酒は力強く凝縮感のある味わいが特徴となります。

福地Fukuji

田高と同じく中生代白亜紀(約1億4500万年前〜)に形成され、砂岩、泥岩、礫岩の崩積成堆積物を母材としています。表層から下層まで一貫して非常に粘土質で礫はほとんど見られません。
福地地区は加古川の左岸に位置しますが、東にある山地が崩壊し堆積・形成された土地となり、加古川の影響をあまり受けていません。
東側に山があり、西は開けているため夜も温かい気候となります。
ミネラルが豊富な粘土質の地質が特徴で、栄養を蓄えやすい土壌。生み出される日本酒は、柔らかさやふくよかさをよく表現しています。
また、田高に比べ日照量が少なく、高温と水の影響を大きく受けるため、ヴィンテージごとに表情の違いが出やすいテロワールとなります。

黒田庄町門柳

黒田庄町門柳

色調はボタニカル、白桃やラ・フランス、鈴蘭の香りが穏やかに立ち上がり、グラスを回すとその土地が思い浮かぶようなニュアンスやムスク香を感じさせます。
そこにクリームチーズの香りが加わり複雑性が高くエレガント。
フレッシュな酸味、米の旨み、ミネラルを伴った心地よい苦味のバランスが素晴らしいミディアムからフルボディの味わいはビロードのようなテクスチャーと共に、
その余韻は長くテロワールを連想させます。
そしてなぜか懐かしさも感じさせます。

黒田庄町田高

黒田庄町田高

色調は淡く美しい翡翠色。フレッシュな柑橘や青リンゴ、ディルやアネットのようなハーブの香りが中心となり非常に爽やかな印象。
グラスを回すと米由来のミネラルの香りが立ち上がってきます。
香り同様に味わいも非常に爽やかでフレッシュな印象を感じ取れます。
味わいの特徴である凛とした酸はとても上品で、米由来の旨みとのバランスが素晴らしい。
清々しい酸は余韻に向かって味わいを引き締めスレンダーな印象を与えます。

黒田庄町福地

黒田庄町福地

かすかな黄緑のトーンが印象的な輝きのあるクリスタル。
グラスに鼻を近づけるとクリーミーかつ華やかな香りがフレッシュなメロンや白桃の香りを包み込むように感じられます。
空気に触れるとスモーキーなミネラルやクリームに加え、マッシュルームの香りがより立ち上がりふくよかな印象。

口に含むとフレッシュかつ柔らかい酸味が口中を支配し、溶け込んだアルコールの風味と米の旨みのコンビネーションが麗かな印象を与えます。
余韻には滑らかなテクスチャーと共にフルーツの風味を感じ、より深い味わいを緻密に表現しています。

テイスティングコメント

KUHEIJI エグゼクティブ・アドバイザー
近藤 佑哉


〈略歴〉
2012年、大学卒業後、銀座レカンにコミ・ド・ランとして入社。
その後、ホテル ニュー・オータニ、レストラン トゥールダルジャン・
トーキョーなどで研鑽を積む。
2019年、銀座レカンにソムリエとして戻る。
2021年4月より銀座レカングループ 飲料統括マネージャー就任。

「火を通して新鮮、形を変えて自然。火を使って、あるいは形を変えてより新鮮に、より自然に、造り変える事は、素材に対する祈りである。」
(元伊勢志摩観光ホテル総料理長・故高橋忠之さんが残された言葉です。著書「美食の歓び」より)
このフレーズを目にした時、ハッとさせられました。僭越ですが、実は弊社も同じ考えで米と言う素材を日本酒に代えておりました。
「火を通して新鮮」日本酒も最後のプロセスで火入れと言う工程がございます。
「形を変えて自然」我々にとっての素材は自ら栽培している米です。毎年起きる田圃のドラマと共に、それを身体に染み込む様なナチュラル感でお届けしたいのです。
「素材に対する祈り」自ら育てた愛おしいお米をSAKEへと変化させる者として、それを生かし切ってやる使命です。敬意です。
口に入る品を造る者同士、目指す先、行き着く先は同じと、大先輩から心強さと勇気を頂きました。シェフ、ありがとうございます。
田圃から始まるこのSAKE達は、「火を通して新鮮、形を変えて自然。」を体感して頂けると自負しています。

久野九平治