2010年、農と醸との垣根を越えるべく、初めて田圃の土に足を踏み入れました。
実際に携わることでしか得られない経験の数々。
それは、田圃一枚一枚の土地の違い、毎年の天候の違いであり、とりわけ太陽の尊さが身に沁みました。
田圃で起きるドラマは年毎に新しく、決して同じ物語を紡ぎません。
そうした私たちが肌で感じてきたテロワールをストレートに表現しました。
色調はボタニカル、白桃やラ・フランス、鈴蘭の香りが穏やかに立ち上がり、グラスを回すとその土地が思い浮かぶようなニュアンスやムスク香を感じさせます。
そこにクリームチーズの香りが加わり複雑性が高くエレガント。
フレッシュな酸味、米の旨み、ミネラルを伴った心地よい苦味のバランスが素晴らしいミディアムからフルボディの味わいはビロードのようなテクスチャーと共に、
その余韻は長くテロワールを連想させます。
そしてなぜか懐かしさも感じさせます。
色調は淡く美しい翡翠色。フレッシュな柑橘や青リンゴ、ディルやアネットのようなハーブの香りが中心となり非常に爽やかな印象。
グラスを回すと米由来のミネラルの香りが立ち上がってきます。
香り同様に味わいも非常に爽やかでフレッシュな印象を感じ取れます。
味わいの特徴である凛とした酸はとても上品で、米由来の旨みとのバランスが素晴らしい。
清々しい酸は余韻に向かって味わいを引き締めスレンダーな印象を与えます。
かすかな黄緑のトーンが印象的な輝きのあるクリスタル。
グラスに鼻を近づけるとクリーミーかつ華やかな香りがフレッシュなメロンや白桃の香りを包み込むように感じられます。
空気に触れるとスモーキーなミネラルやクリームに加え、マッシュルームの香りがより立ち上がりふくよかな印象。
口に含むとフレッシュかつ柔らかい酸味が口中を支配し、溶け込んだアルコールの風味と米の旨みのコンビネーションが麗かな印象を与えます。
余韻には滑らかなテクスチャーと共にフルーツの風味を感じ、より深い味わいを緻密に表現しています。
KUHEIJI エグゼクティブ・アドバイザー
近藤 佑哉
「火を通して新鮮、形を変えて自然。火を使って、あるいは形を変えてより新鮮に、より自然に、造り変える事は、素材に対する祈りである。」
(元伊勢志摩観光ホテル総料理長・故高橋忠之さんが残された言葉です。著書「美食の歓び」より)
このフレーズを目にした時、ハッとさせられました。僭越ですが、実は弊社も同じ考えで米と言う素材を日本酒に代えておりました。
「火を通して新鮮」日本酒も最後のプロセスで火入れと言う工程がございます。
「形を変えて自然」我々にとっての素材は自ら栽培している米です。毎年起きる田圃のドラマと共に、それを身体に染み込む様なナチュラル感でお届けしたいのです。
「素材に対する祈り」自ら育てた愛おしいお米をSAKEへと変化させる者として、それを生かし切ってやる使命です。敬意です。
口に入る品を造る者同士、目指す先、行き着く先は同じと、大先輩から心強さと勇気を頂きました。シェフ、ありがとうございます。
田圃から始まるこのSAKE達は、「火を通して新鮮、形を変えて自然。」を体感して頂けると自負しています。
久野九平治